「今週だけ0円」が毎週続く。LINEMOの手数料無料で、誰が誰を買っているのか

「今週だけ0円」が、先週も今週も、そして再来週も続いている。
ソフトバンクのオンライン専用ブランドLINEMOが、2026年11月4日から「契約事務手数料無料キャンペーン」を始めました。通常3,850円の契約事務手数料が0円になり、期間は11月8日(日)までの5日間です。ところが公式サイトを順に読んでいくと、筆者はある違和感に気づきました。この「期間限定」、実は直前の週にも同じものをやっているのです。
今回は、毎週入れ替わる「限定キャンペーン」の仕組みを、乗り換え客の獲得コストという視点で読み解きます。
仕組み:手数料0円は「あとから差し引く」0円
LINEMOのキャンペーンページによると、対象は「LINEMOベストプラン」または「LINEMOベストプランV」に、他社からの乗り換え(MNP)か新しい電話番号で申し込んだ人です。条件は次の3つです。
- 11月4日〜11月8日に申し込むこと
- 申し込み月の翌月末までに開通すること
- 申し込み時に契約事務手数料が発生していること
特典は「契約事務手数料3,850円割引」で、LINEMOの通信料金の請求時に請求額から差し引く方式です。窓口で最初から取らないのではなく、いったん発生した手数料を後の請求で相殺する設計です。また、ソフトバンク、ワイモバイル、LINEモバイルからの乗り換えは対象外と明記されています。
さらに、同じページでPayPayポイントのキャンペーンとの併用ができると案内されています。他社からの乗り換えなら「ベストプランV」で12,000円相当、「ベストプラン」で10,000円相当。新しい電話番号での契約なら、それぞれ6,000円相当と3,000円相当です。PayPayポイントは「出金・譲渡不可」と注記されています。

数字と言葉のトリック:「期間限定」が連続すると、それは定価になる
筆者が引っかかったのは「期間限定」という言葉です。LINEMOの10月24日付のお知らせでは、10月24日〜11月3日にも「契約事務手数料無料キャンペーン(2026年10月4週目開催)」を実施していました。つまり11月4日開始の今回は、その翌日から始まった「次の限定」です。
そして今回のページの注記には、「2026年11月9日(月)より、本キャンペーンとは適用条件が異なる同等のキャンペーンを予定」とあります。さらにLINEMOの週穫祭告知ページ(最終更新日2026年11月2日)には、11月23日〜12月6日にも契約事務手数料3,850円割引のキャンペーンが「予定」として載っています。
加えて、キャンペーンページには「本キャンペーンは過去に実施したものと同様または有利な適用条件・特典内容で再度実施される場合あり」とまで書かれています。会社側がきちんと開示しているのは誠実です。ただ、読み手の側は「今週を逃すと損をする」という気持ちで申し込みを急ぐかもしれません。数字は嘘をついていませんが、「限定」という言葉が生む焦りは、実態より大きく作用します。
「初月無料」のサブスクは、解約画面がいちばん遠い。の記事でも紹介しましたが、無料や割引の言葉は「いつまで」「誰が対象か」という条件とセットで読まないと、判断の材料になりません。
得をするのは誰か:「乗り換え客」を買っている構図
では、毎週のように手数料を0円にして、誰が得をするのでしょうか。
まず利用者です。乗り換える人は、手数料3,850円と、条件を満たせばPayPayポイントを受け取れます。これは事実として得です。
一方、事業者側から見ると、これは「他社から来る顧客1人あたりにいくら払うか」という獲得コストの設計です。ここからは推測です。同じグループのソフトバンクやワイモバイルからの乗り換えを対象外にしているのは、グループ内でお客さまが移っても新しい売上にはならないからだと筆者は考えています。つまり特典は、グループの外から来る顧客にだけ払う「入場料」です。
また、特典の一部がPayPayポイントで払われる点も見逃せません。ポイント還元で「実質無料」になった分は、誰が払っているのか。の記事でも紹介しましたが、ポイントは現金と違って、使える場所が決まっています。出金・譲渡ができないポイントは、受け取った人がグループの経済圏の中で使うことになります(グループ全体の収益への効果は公表されておらず、これも推測です)。
さらに、手数料0円を請求時に差し引く方式なので、特典を受け取るには開通して利用を始める必要があります。8日間以内のキャンセルで解除された場合は特典が付与されないと明記されています。特典は「申し込んだ人」ではなく「使い始めた人」にだけ払われる仕組みです。

ビジネスへの効き方:自社の「限定」は本当に限定か
この構図は、通信業界に限った話ではありません。筆者は、経営者や営業担当の方に3つの点を確認してほしいと思います。
売上:毎月の「キャンペーン価格」は、実質の定価になっていないか
入会金無料、初回手数料0円といった施策を毎月続けているなら、それはもう割引ではなく定価です。帳簿上は「通常価格からの値引き」として扱っていても、実際に通常価格で買う顧客がほとんどいないなら、価格表のほうを見直す時期かもしれません。
コスト:特典は「誰に」払っているか
LINEMOがグループ内の乗り換えを対象外にしているように、自社の特典も「新しく来る顧客」に絞れているかを確認します。既存顧客が別プランに移るだけで特典が出るなら、それは獲得コストではなく単なる値引きです。
判断とリスク:「限定」で急がせる営業は、信頼を削る
同じキャンペーンが翌週も出てくると、顧客は学習します。「急がなくても次がある」と思われれば、限定という言葉は効かなくなります。営業の場で「今月だけ」と言うなら、本当に今月だけにする。その一貫性が、長い目で見ると最も安い販促費になると筆者は考えています。
米国株の「手数料0ドル」、無料になったのは入口だけだ。の記事でも紹介しましたが、「無料」をどこに置くかは、価格設計そのものです。入口の手数料を0にして、継続利用と経済圏で回収する。今回のLINEMOの設計も、その一つの型として読めます。
まとめ
LINEMOの契約事務手数料3,850円の無料化は、条件を満たせば確かに0円になります。ただし、10月24日から続く「週替わりの限定」であり、11月9日以降も「同等のキャンペーン」が予定されています。限定という言葉は急ぐ理由になりますが、急ぐ理由が本当にあるかは、公式ページの注記が教えてくれます。自社の販促でも、限定の言葉を使うときは、その限定が本物かどうかを先に確認しておきたいところです。
出典・確認日
- LINEMO「契約事務手数料無料キャンペーン(2026年11月1週目開催)」https://www.linemo.jp/campaign/syukakusai/202611/1104/(確認日:2026年11月4日)
- LINEMO お知らせ(2026年10月24日)https://www.linemo.jp/info/press/2026/26102401.html(確認日:2026年11月4日)
- LINEMO 週穫祭告知(最終更新日2026年11月2日)https://www.linemo.jp/info/press/2025/25051202.html(確認日:2026年11月4日)
※キャンペーン内容は予告なく変更される場合があります。最新の条件は公式ページでご確認ください。
合わせて読みたい
- 「初月無料」のサブスクは、解約画面がいちばん遠い。
- ポイント還元で「実質無料」になった分は、誰が払っているのか。
- 米国株の「手数料0ドル」、無料になったのは入口だけだ。
- 高額講座の「無料体験」は、入口だけ無料だ。
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