合格率90%の資格講座は、嘘をつかずに数字を作れる。

「受講者合格率90%」。その数字は本当かもしれない。ただし、あなたの合格率ではない。
母数の選び方ひとつで、合格率はここまで姿を変える。
世間の常識:合格率が高い講座は、良い講座
資格を取るなら、合格実績のある講座を選びたい。当然の感覚だ。広告の合格率は、その判断材料として置かれている。
ただし国家資格などの試験には、実施団体が公表する公式の合格率がある。たとえば受験者全体での合格率が2割の試験でも、講座側の「合格率」は9割と表示できる。矛盾ではない。数え方が違うだけだ。
数字の作り方:母数を選ぶ
仕組みはこうだ。最後まで受講を終えた人だけを数える。模試で一定の点数を取った人だけを数える。合格の報告があった人だけを数える。
どの数え方も「嘘」ではないことが多い。ただ、分母が小さく、条件が厳しいほど、合格率は上がる。広告に載るのは、その数字だ。数え方の注記は、小さい文字の中にある。
さらに言えば、「合格率」は過去の受講者の結果であって、これから受けるあなたの結果を保証するものではない。当たり前だが、広告の空気の中では忘れやすい。

天邪鬼の主張:合格率より、数え方を聞く
本誌の提案は、講座を選ぶときに聞く質問を変えることだ。
「その合格率の分母は、申込者全員ですか、修了者ですか」「受験者全体の公式合格率と比べて、どうですか」。この2つに答えられる講座は、少なくとも数字の扱いが誠実だ。
そして支援の中身を見る。低コストで実践できる環境があるか。分からないところを質問できる伴走があるか。合格率の大きさより、あなたの勉強が続く仕組みがあるかどうかだ。
母数の選び方には、型がある
合格率の作り方には、いくつかの決まった型があります。第一の型は「修了者ベース」です。受講を開始した全員ではなく、カリキュラムを最後まで終えた人だけを分母にする。途中で離脱した人は、最初からいなかったことになります。第二の型は「申告ベース」で、受験したかどうか、合否がどうだったかを、受講者の自己申告で集計する。落ちた人は申告しない傾向があるため、数字は自然に上がります。第三の型は「選抜ベース」で、入会時に模試や審査で有望な層だけを受け入れる。合格率が高いのは教育の結果ではなく、入口の選別の結果です。
期間の切り取りも型の一つです。合格者が多かった年だけを抜き出す、複数の試験回を合算して母数を曖昧にする、直近の結果ではなく累計の印象で語る。さらに「合格」の定義にも幅があります。全科目の総合合格なのか、科目別の合格を含むのか、模擬試験の合格判定なのか。広告の数字は、どれも嘘とは限りません。ただ、どの型で作られた数字かを知らずに比べると、比較そのものが成立しません。
景品表示法の観点でも、根拠の乏しい数字や、実際のものより著しく優良と誤認させる表示は問題になります。ただし規制の線引きを待つ必要はなく、買い手側の質問で大半は見抜けます。分母と分子を人数で聞く。それだけです。

数字で確かめる:%を人数に戻す
合格率90%という数字を、人数に戻してみます。仮の例です。受講開始が100人、最後まで修了したのが40人、受験を申告したのが20人、合格したのが18人。このとき「修了者のうち申告した人の合格率」は90%になりますが、受講開始した全員から見た合格は18%です。どちらの数字も計算としては成り立ちます。違うのは、どちらを広告に使うかです。90%の看板の後ろに、100人中18人という現実が隠れていることがあります。
もう一つ見るべきは、受験に至る割合です。資格講座の目的は資格を取ることですが、受講しても受験しない人は一定数います。仕事や家庭の事情もありますが、カリキュラムが受験まで運んでくれない講座もあります。合格率の分母の話をするときは、「受講者の何%が受験したか」までセットで聞くと、講座の伴走の実力が数字で見えます。
判断の手順は三つです。第一に、合格率を人数(分母・分子)で聞く。第二に、受験率と離脱率を聞く。第三に、不合格時の保証の条件を金額で確認する。数字の質問に数字で答える講座は、成果を数字で管理している講座です。逆に、雰囲気と熱意で返す講座は、成果の測り方も雰囲気だと思って構いません。
合格率のほかに、講座の実力を映す数字があります。受講の継続率(途中で辞めない割合)、受験までの到達率、そして資格取得後に仕事や収入がどう変わったかの追跡です。最後の追跡までしている講座は多くありません。だからこそ、聞く価値があります。「合格後の変化を追っていますか」という質問への答えは、その講座が資格をゴールにしているか、仕事への入口にしているかを映します。合格は通過点であって、目的ではないはずです。
反対側の現実
では、合格率を出していない講座が誠実か。それも短絡的だ。数字を出すこと自体は悪くないし、今回、個別講座の合格率の算出方法を実地に確認したわけではない。分けて書いておく。
確かめる材料はある。各試験の公式合格率は、実施団体のサイトで公表されている。広告の数字と並べて見るだけで、見え方は変わる。
正直、筆者も大きい数字には弱い。「90%」と書かれれば、自分もその側に入れる気がしてくる。
それでも、分母を聞く習慣だけは残したい。数字は嘘をつかなくても、数字の並べ方は人の判断を動かす。
講座の契約条件は「高額講座の「無料体験」は、入口だけ無料だ」でも、資格と仕事の関係は「転職エージェントは、あなたの年収が上がると儲かる」でも取り上げています。
出典
1. 消費者庁「景品表示法・優良誤認表示」に関する考え方2. 各資格試験の公式合格率は、試験実施団体の公表資料を確認
出典確認:2026年10月30日。広告・提携先なし。
この記事で売ろうとしている方向性:低コストの実践環境と伴走型の学習支援。具体的な提携先・商品は未選定。
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